寒天と血圧、コレステロール、大腸がんのお話

寒天とは?

  寒天とは紅藻類に存在する粘性物質を熱水抽出し、水分を除去した乾物のことです。カラギナンも紅藻類海藻から抽出されますが種が異なっています。
  寒天製造の歴史は古く、約350年前に遡ります。天草類を煮て得た液を固めてトコロテンとして食用にしたのは、さらに昔の平安朝の時代であったと記されていますが、干物状の寒天が発明されたのは徳川4代将軍家綱の時代です。ある冬のこと、山城国伏見(京都)の美濃屋太郎左衛門方で、参勤交代の途にある薩摩藩主島津公の御休泊の栄に浴したことがありました。同家は各種の品々で饗応しましたが、その中に天草を煮てつくったトコロテン料理があったそうです。その際残ったトコロテンを庭に捨ておいたところ厳寒期のため、これが凍結し、日中自然に融解し、乾操し白い美しい乾物となりました。
  太郎左衛門は不思議に思いこれを煮てみると元のトコロテンになることを発見し、種々研究の結果、寒天の製造を確立したと伝えられます。その後摂津(大阪)の住人宮田半兵衛が更に製法の改良を行い、大阪、京都、兵庫の山間部へと広がって行きました。
  第二次世界大戦前、寒天は我が国特有の重要な輸出水産物で、その用途に細菌培地があることから、戦中寒天の輸出が戦略的意味合いから禁止されました。困った諸外国は自力による寒天の製造を試み、気象条件の異なる諸外国は天然の寒さに頼らない工業的製法の粉末寒天の製法を編み出しました。
  これが粉末寒天の始まりで、日本でも昭和21年頃より研究が行われ、次第に工場が増加し、昭和45年頃には35社の多きを数えるようになりました。しかし、原料の入手難や、製造技術の未熟さから多くの企業が廃業や倒産に追い込まれ現存しているメーカーは僅か7社のみになりました。
  寒天は一方、海外での生産国は良質な原藻産出国であるモロッコ、ポルトガル、スペイン等で次第に盛んになり、日本の指導によってチリーやアルゼンチンでも良質の寒天が造られるようになったのです。

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寒天の効用

寒天=食物繊維

  寒天はそのほとんどが食物繊維で、100g中80.9gとあらゆる食品のなかで食物繊維を一番多く含んでいます。しかも、この食物繊維はなめらかでおいしい食品そのものなのです。

食物繊維を多く含む食品

No. 食 品 名 含有率(%)
1 寒 天 80.9
2 かわのり 44.9
3 ひじき 43.3
4 ほししいたけ 42.5
5 あおのり 38.5
6 かんぴょう 30.1
7 あまのり 29.1
8 こんぶ 27.1
9 切り干し大根 20.3
10 いんげんまめ 19.3

血圧を下げる

  食物繊維が、血圧の上昇を抑えたというデータは、動物実験でも人間に対するものでも幾つか出ています。この結果、食物繊維は腸内で脂肪吸収を妨害し、いっしょに排泄するからだろうと考えられています。寒天の原料である海藻類に多く含まれている食物繊維には、特に血圧降下作用、コレステロール低下作用があることが明らかになっています。

コレステロールを低下させる

  動脈硬化を進行させる最大の因子は、血液中のコレステロール量の増加です。その予防のためには、善玉コレステロールが増え、悪玉 が減ることが理想的とされています。
  実験で「寒天」などの水溶性多糖類には悪玉コレステロールを減らし、善玉の降下を抑制する効果のあることがわかりました。水溶性多糖類は、腸内でねばねばした状態になるので、胆汁酸が腸壁まで到達することを妨害します。胆汁酸は脂質の消化を助ける主成分なのですが、使われても腸壁から吸収されて肝臓でリサイクルされます。しかし、水溶性多糖類が吸収を妨害していますので、胆汁酸は肝臓で作らなければなりません。その胆汁酸の成分の原料はコレステロールなのです。
  つまり、新しい胆汁酸を合成するために体内のコレステロールがそれだけ少なくなるというわけです。

大腸ガンを予防する

  日本人の死亡原因のトップはガンで、中でも大腸ガンが増えてきています。この原因の1つに、欧米型の食生活があると考えられます。
  欧米型の食事を続けると便の量が少なくなり、しかも大腸内に長く滞留するようになるからです。もし、大腸内で発ガン物質やそれを助ける物質が出来た場合、それを吸収する時間も長くなります。また、動物性蛋白質や脂肪を多くとると発ガン物質やそれを助ける物質が出来やすくなるという結果も出ています。腸内に食物繊維がたくさんあると、発ガン物質が吸着排泄されるので大腸はその作用をあまり受けにくくなります。しかも食物繊維は胃の中で水分を吸いかさを増やすので発ガン物質が希釈され、大腸壁にふれる率も低くなります。
  また、腸内菌がガンの予防や発生に関わりがあると言われますが、食物繊維はこの腸内菌、特に善玉ビフィズス菌を増殖しやすくする働きもあります。ビフィズス菌は、腸内で悪玉菌の増殖を抑えたり、有害物が吸収されるのを防いでくれます。

血糖値を下げる

  食物繊維を多くとるようにすると、胃がその内容物を腸へ送りだすスピードが遅くなります。そのため、腸壁からの糖質吸収にも時間がかかり血糖値の上昇も緩やかになるわけです。
  糖尿病はインシュリンの分泌障害によって食物としてとり入れた糖質の体内利用がうまくいかず血糖値が異常に高くなる病気です。食物繊維が血糖値の上昇を抑えていますので、インシュリンの分泌が少ない人でも充分糖質を分解させることができるわけです。

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